どうも!菊之進です。
今日は、対人関係の摩擦を軽くするアドラー心理学の「課題の分離」についてお話しします。課題の分離という考え方を理解することで、あらゆる職場ストレスを軽減することができます。
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▶︎YouTube:アドラー心理学に学ぶ!課題の分離で職場ストレスを解消する方法
1.課題の分離とは
課題の分離とは、自分の課題と他者の課題をわけること。アドラーは言う。
あらゆる対人関係のトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むこと-あるいは自分の課題に土足で踏み込まれること-によって引き起こされます。
引用:嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え p140
これは、どういうことなのだろうか?何が問題なのか。
まだ少し分かりにくいと思うので、よくある職場ストレスを例に「課題の分離」の仕方や考え方をみていこう。
2.課題の分離で解決する職場ストレスの事例
①先輩・上司の視点(立場的に上にある人)
まずは、先輩や上司と言った職場の中で立場的に上にある人が抱えているストレスに焦点をあてて3つのケースを紹介する。
ケース1:言うことを守らない部下にイライラする
あなたの言ったことを相手が理解していななくてイライラするというケースを想定して欲しい。この場合のあなたと相手の課題をそれぞれみてみよう。
それぞれの課題 | |
あなた | 相手の職務が全うできるように導くこと(どうしたら成長できるか考えること) |
相手 | 自身の職務を全うすること |
相手があなたの期待通りに働いてくれなければ、確かにイライラするだろう。「なぜやってないんだ!?あれだけ大事だと伝えたはずなのに」と怒りたくもなる。しかし、あなたの課題は、「怒る」ことではない。「導く」ことである。
アドラーはこう言う。
相手が自分の思う通りに動いてくれなくても、怒ってはいけません。それが当たり前なのです。
引用:嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え p136
「怒る」という感情で相手を自分の思い通りに動かそう・支配しようとする行いについて、アドラーは「幼稚な行動」と批判している。
相手の意見や考えを聞いて適切な解決策を掲示するまえに、イライラした態度で相手にネチネチ嫌味をいったり、怒ってしまうのは逆効果になるのだ。あなたの課題は、自らの指導の仕方を改めることだけである。
ケース2:お節介を焼く
次に、部下や後輩に良かれと思ってアドバイスしすぎてしまうケースを想定する。この場合のあなたと相手の課題をそれぞれみてみよう。
それぞれの課題 | |
あなた | 相手があなたに相談しやすい信頼関係を気づくこと(相手の職務を手取り足取り手伝うことではない) |
相手 | 自身の職務を全うすること(他者の力を借りすぎずに自力で問題解決する力を養うこと) |
相手のことを思って、相手がいち早く成長できるようにいろいろなアドバイスをしたくなる気持ちもわかる。しかし、気をつけてほしい。相手から聞かれてもいない、頼まれてもいないのに、たくさんの口出しをすると、相手の成長する機会を奪ってしまいかねない。
アドラーはこう言う。
相手役から、困難を克服する力を奪う、こうした行為を勇気くじきと呼びます。
引用:アドラー心理学 ―人生を変える思考スイッチの切り替え方― p58
他者の課題に介入することは、その人の取り組むべき課題を取り上げているようなもの。介入を繰り返せば、その人は何も学ばなくなる。人生のタスクに立ち向かう勇気が挫かれる状態になるという。
では、何もせずに放置していればいいのか?といわれればそれも違う。アドラーのいう課題の分離は完全な放任主義ではない。相手があなたに相談しようと思える信頼関係を築いて、困っているとき、大事なときに手を差し伸べる。いつでも援助するが、その人の課題に土足で踏み込まず、あたたかく見守るというスタンスをとる。
ケース3:賞罰教育をおこなう
部下や後輩を、つい褒めすぎてしまう、あるいは叱りすぎてしまうケースを想定してほしい。この場合のあなたと相手の課題をそれぞれみてみよう。
それぞれの課題 | |
あなた | 相手の自立をうながすこと(飴と鞭で支配しなくても行動できる人間に育てること) |
相手 | 自身の職務を全うすること(相手から褒められなくてもモチベーションを落とさずに仕事ができるようになる。あるいは、相手から叱られても落ち込むことなく自分の仕事を全うできること) |
相手を効果的に教育するのに、飴と鞭をつかう賞罰教育が良いと聞いたことがあるだろう。僕自身、褒められたらのびると思って育ってきたので、後輩たちを褒めまくってのばすという指導方針をたてていたことがあった。
しかし、アドラーはこれを批判する。
叱られたり、ほめられたりして育った人は、叱られたり、ほめられたりしないと行動をしなくなる。そして評価してくれない相手を敵だと思うようになるのだ。
引用:アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉 p57
相手のよくない言動をとがめて、強い態度で責めることを「叱る」という。たしかに叱ることで相手は自分の思い通り、期待通りのはたらきをする。
しかし、普段から叱られている側は、深く傷つき、勇気をくじかれ、困難に挑戦する活力を奪われる。だんだんと相手を恨み、余計に意固地になり、反発したい気持ちになる。
次に「褒める」という教育方法について、一見正しいかのようにみえてこれも良くない。「よく、頑張った!素晴らしい成績だね」と言われれば誰だってうれしいだろう。しかし、この言葉のうらには次のメッセージが隠れていることを忘れてはいけない。
「良い結果の残せないあなたに価値はない。いい結果が残せなきゃ認めない」という本音が隠されているのだ。
褒められる側は、あなたからの評価をもらうために頑張るが、仕事はそれほど甘くない。どれだけ頑張っても良い成果を出せないことも往々にしてある。そんな時でも、あなたが褒めてあげないとどうなるだろうか。
こんなに頑張っているのに、ほめられない。じぶんの努力を何一つ認めてくれないとなって、「評価してもらえないなら、もう、がんばらない」と自暴自棄に陥ることすらある。僕はこれまでにそう言う人を何度もみてきた。
このように、褒めることを教育方針の柱に置いた時点で、あなたは永遠にその人を褒め続けなければならないし、相手も褒められないと動かなくなる。褒めることは相手のあなたに対する「依存性」を高めてしまうのだ。。
では、一体どうしたら良いのだろうか。
アドラーはこう言う。
結果を評価するのではなく、行為や過程のよいところを認め、伝えるのです。
引用:アドラー心理学 ―人生を変える思考スイッチの切り替え方― p166
「よくやった」「偉いぞ」と上から目線でほめるのではなく、「手伝ってくれてありがとう」「〇〇さんのおかげで、だいぶ助かってる」といったかんじに、横から目線で勇気づけることが大切だとしている。
対等な関係を意識して勇気づけることで、相手の自分に対する依存性を高めずに、自立性を高めることができる。自立性がたかまれば、ご褒美や褒め言葉などは不要になるのだ。
②後輩・部下(立場的に下にある人)
次に、部下や後輩といった職場の中で立場的に下にあるひとが抱えるストレスに焦点をあてて3つのケースを紹介する。
ケース1:上司が褒めてくれない
上司が褒めてくれない、認めてくれないというケースを想定してほしい。この場合のあなたと相手の課題をそれぞれみてみよう。
それぞれの課題 | |
あなた | 褒められなくても自分のやるべきことを自分で全うできる力を養うこと |
相手 | 適切な教育方法を学ぶこと(褒められなくても行動できる部下を育てる) |
アドラーはこう言う。
ほめてもらうことが目的になってしまうと、結局は他者の価値観に合わせた生き方を選ぶことになります。
引用:嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え p203
常に他者の顔色を窺いながら、あらゆる他者に忠誠を誓いながら生きていると、必ず対人関係に苦労する人生になる。相手があなたに対して褒めるか褒めないかは、あなたにはどうすることもできないため、くよくよと悩んでいても仕方がないのだ。
ではどうしたらよいのだろうか?
あなた自身で、課題にとりくむ「目的」を再度考えてみて欲しい。勉強にしても仕事にしても、親に気にいられたり、上司に気に入られるためにする!というのは適切ではない。自分の将来のため、良い仕事をして社会貢献するためというのが本来の目的ではないだろうか。
自分の目的を再確認して、自分で自分の人生の目標を設定してみる。そうすることで、他者からの承認が得られなくても、よしがんばろう!と思えるようになるものだ。
ケース2:上司が不機嫌で怖い
上司が不機嫌で「私、怒らせるようなことを何かしたかな…」と心配になったケースを想定してほしい。この場合のあなたと相手の課題をそれぞれみてみよう。
それぞれの課題 | |
あなた | 上司の不機嫌で思い悩まないようにする(上司の機嫌に左右されずに仕事できるようにする) |
相手 | 適切な教育方法を学ぶこと(褒められなくても行動できる部下を育てる) |
上司が何だかピリピリしていて職場の空気がおもくなり、もしかしたら、上司の不機嫌の原因は自分の中にあるのではないかと悩むことがあると思う。アドラーはこの事態について、こう言う。
不機嫌な相手に接したときは、その不機嫌は自分とは関係ないと考え、気にしないことです。
引用:アドラー心理学 ―人生を変える思考スイッチの切り替え方― p164
天気と一緒。雨の日に「雨よ止んでくれ」と念じても晴れないように、ピリついた上司に「上機嫌になってくれ」と祈っても変わらない。
上司の不機嫌はあなたが対処すべき課題ではない。あなたの課題は、たとえ上司が不機嫌であっても、仕事のモチベを落とさないことである。
不機嫌な人には「他者を遠ざけたい」という目的があるのだと考えて、必要最低限のコミュニケーションをとり距離を置きましょう。
ケース3:お節介を焼かれる
上司からお節介を焼かれたときのことを想定してほしい。この場合のあなたと相手の課題をそれぞれみてみよう。
それぞれの課題 | |
あなた | 適度な距離感を保つ(上司の意見を鵜呑みにしないこと) |
相手 | 人を思い通りに動かすことはできないと理解する |
長く仕事をしていればいろいろなことがある。あなたにも、自分からアドバイスを求めてもいないのに、余計なお節介を焼かれて嫌な思いをした経験があるだろう。
- 上司の武勇伝、仕事観について永遠と聞かされる
- あなたが真剣に考えたキャリアプランに横槍を刺す
- 恋愛や結婚の面で、いい人いないのか?と度々聞いてくる
などなど。本当に余計なお世話だ。アドラーはこう言う。
他者の課題には介入せず、自分の課題には誰ひとりとして介入させない。
引用:嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え p150
あなたが選んだ道について、他者が何を感じるかは他者の課題。あなたは、自分の本心を曲げてまで、上司の意見に擦り寄る必要なんてない。
仕事観、キャリア設計、結婚にとどまらず価値観全般において、自分の課題に踏み込まれそうになったら、たとえ上司であってもノーと言いましょう。
人間は自分の人生を描く画家である。あなたを作ったのはあなた。これからの人生を決めるのもあなた。
出典:アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉 P2
あなたの決断は誰かに強制されるものではない。あなた自身が自由に選んで良い。
3.まとめ
職場ストレスの主な原因は、対人関係にある。
アドラーは、あらゆる対人関係のトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むこと-あるいは自分の課題に土足で踏み込まれることによって引き起こされると説いている。
もしあなたが、勤め先でストレスを抱えているのなら、「課題の分離」をしてみるといいかもしれない。
どこからどこまでがあなたの課題で、どこからどこまでが相手の課題なのかを整理するだけでも、モヤモヤが軽減する。相手の考え方や感情、行動の部分まであなたが抱え込む必要はないのだから。
重ねていうが、天気と一緒。雨の日は雨のように、相手の考え方や感情を変えることは不可能。あなたは、自分のできることだけを見つめたら良い。
道は二つしかない。起きてしまった過去や現状をいつまでもくよくよと悩むのか、学びを活かして未来に進むか。それではまた!
参考図書のご紹介
本記事を執筆するにあたり参考にした書籍です。
参考図書1:嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え
参考図書2:アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉
参考図書3:アドラー心理学 ―人生を変える思考スイッチの切り替え方―